今まで読んで本当に面白かったWeb小説14選
これまで読んだWeb小説の中から、単純に「これは面白かった」と今でも思える作品を選びました。 戦記、異世界転生、ダークファンタジー、悪役令嬢などジャンルは特に限定していません。 好みとしては、主人公一人の力ですべてが解決する物語よりも、主人公以外の人物にもそれぞれの事情や目的があり、社会や制度、歴史、政治、生活などが主人公とは関係なく存在している作品を高く評価する傾向があります。 また、奇抜な設定や派手さよりも、「この世界なら本当にこうなるだろう」と思える因果や、人間の選択に説得力がある作品が好きです。 一方で、そうした条件とは関係なく、単純に読んだ時の衝撃があまりにも大きかった作品もあります。 順位については作品の完成度を客観的に比較したものではなく、読んだ当時の衝撃、今でも記憶に残っているか、もう一度読みたいと思えるか、といったものを含めた完全な個人的評価です。 古い作品もかなり含まれています。 改めて掘り返してみると、昔と今で自分の好みは意外なほど変わっていませんでした。
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玉葱とクラリオン
小説家になろう読んだ当時、「Web小説でここまでの世界を作れるのか」とかなり衝撃を受けた作品です。 異世界転移と現代知識という、今では珍しくない題材から始まりますが、この作品で好きなのは「現代人だから知識を出せば何でもうまくいく」とならないところ。主人公がやろうとすることには技術、設備、人、金、商売が必要で、それらがやがて社会や政治、戦争へとつながっていきます。 そして何より、読み進めるほど世界の見え方そのものが変わっていく。 今目の前にある制度や神話や技術にも過去があり、その過去のさらに向こう側まで世界が続いている。異世界の「設定」を読んでいるというより、一つの文明の歴史を掘り起こしているような感覚がありました。 かなり下世話な話や馬鹿馬鹿しい部分まである作品なのですが、それと壮大な世界観が不思議なくらい同居しています。 今でもWeb小説を一作だけ挙げろと言われたら、真っ先に候補になる作品です。
- 2
ゴルダナ帝国衰亡記 ~ハーレムはあきらめてください~
小説家になろうかなり人を選ぶ作品です。作者の趣味が全開になったインモラルな部分については、正直「そこまでやらなくても話は十分成立するだろ」と思うこともあります。 それでも、この順位です。 特に好きなのは、戦争が戦場だけで完結しないところ。 貴族、宗教、民族、軍隊、政治、経済、個々人の利害がそれぞれ勝手に動いていて、それらが噛み合った結果として戦争まで動いていく。主人公が正しい判断をしたから世界が都合よく従う、という構造でもありません。 敵にも味方にも事情があり、国家の都合と個人の都合は一致しない。それでも戦争になれば大勢の人間が巻き込まれる。 「軍隊同士が戦っている」のではなく、「国が戦争をしている」と感じられるWeb小説は案外少ないです。 癖の強さから万人には勧めにくいのですが、それを差し引いても、私が読んできた戦記物の中では最高峰です。
- 3
お前が神を殺したいなら、とあなたは言った
小説家になろう読み終えたあと、「こんな小説がWebにあるのか」と呆然とした作品です。 神が本当に存在する世界へ、新興宗教の教祖だった男が送られ、「神を殺せ」と命じられる。 そこだけなら奇抜な異世界転移ものです。 しかし実際に描かれるのは、宗教、教義、組織、政治、信仰、そして人間が思想によって動き、その思想が人から人へ渡るうちに別のものへ変わっていく過程です。 主人公一人だけの物語でもありません。多くの人物にそれぞれの人生と論理があり、誰もが自分の知っていること、自分の信じていることに従って行動する。その一つ一つは理解できるのに、それらが噛み合った結果、とんでもない場所へ歴史が転がっていく。 「誰が正しいのか」ではなく、「なぜその人間はそうするしかなかったのか」を延々突きつけられる作品でした。 神を殺す話でありながら、本当に恐ろしいのは神より人間です。 『玉葱とクラリオン』に続いて、自分の中にあった「Web小説とはこのくらいのもの」という枠を壊された作品です。
- 4
無職転生 ~異世界行ったら本気だす~
小説家になろうあまりにも有名なので今さら説明する必要もない作品ですが、それでも外せません。 私が好きなのは、主人公が転生して「今度は成功する」話というより、失敗も後悔も抱えた一人の人間の人生を、幼少期から長い時間をかけて描いているところです。 主人公は才能もありますし、かなり強くもなります。それでも世界中の問題を一人で解決できる存在にはならない。 家族を作り、人間関係を失敗し、後悔し、時には取り返しのつかないことも起きる。その積み重ねがあるから、最後まで読んだ時に「冒険譚を読んだ」というより、一人の人生を見届けた感覚が残りました。 異世界転生というジャンルを広めた代表作として語られがちですが、私にとって重要なのはそこではありません。 転生という仕掛けを使って、人生を最初から最後まで描こうとした作品として今でも非常に好きです。
- 5
昏の皇子
カクヨムなぜこれほど埋もれているのか、本気でよく分からない作品です。 少年オヅマが、母が父を殺して処刑されるという未来を夢で知るところから始まります。 しかし「未来を知っている主人公が悲劇を回避する」という単純な話ではありません。 家族、貴族、身分、政治、人間関係、友情、愛情、思惑。それぞれが非常に細かく絡み、主人公以外の人物にもちゃんと人生があります。 特に好きなのは、登場人物が物語を進めるために配置された駒に見えないところです。 誰かの行動によって別の誰かの立場が変わり、その人物がまた別の判断をする。その積み重ねによって物語が自然に大きくなっていく。 派手な設定で引っ張る作品ではありません。 ただ、人間を描き、社会を描き、その結果として物語が動く。 こういう小説がもっと評価されないのなら、Web小説の評価というものは本当によく分からないなと思わされます。
- 6
駆けろ雑兵〜ガストン卿出世譚
カクヨム「そうそう、こういうのが読みたかった」と思った作品です。 主人公ガストンは選ばれた勇者でも天才でもありません。村では力自慢でも、本物の戦場へ出ればそれだけでどうにかなるほど甘くない。 それでも戦い、生き残り、少しずつ経験を積み、いつの間にか立場が変わっていく。 私が特に好きなのは、出世がご褒美イベントのように描かれていないところです。 兵士になれば兵士の生活があり、立場が上がれば上がったなりの責任や金の問題がある。戦争も「強い奴が敵を倒しました」で済ませず、城、兵、家臣、領地といったものがちゃんと存在している。 こういう作品を読むと「作者は分かっているな」と思います。 中世風の世界を舞台にしているのではなく、その社会で人間がどう暮らし、どう戦い、どうやって身を立てるのかを考えて書いている。 派手ではありません。 でも、その地味さこそが非常に面白い作品です。
- 7
本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~
小説家になろう「本が読みたい」という、ある意味では非常に小さな欲望から、とんでもないところまで物語が広がっていく作品です。 この作品で好きなのは、本を作ろうとするだけでも世界の仕組みを無視できないこと。 紙がない。金がない。体力もない。身分もない。 だから人と出会い、商売に関わり、職人と関係を作り、それがやがて宗教や貴族社会、政治へとつながっていく。 主人公の目的は最初から最後までかなり一貫しているのに、その行動によって主人公自身の立場と見える世界が少しずつ変化していきます。そしてそれぞれが持つ常識の違いが軋轢と物語を生む、そんな感じです。 世界設定が細かい作品はいくらでもありますが、この作品は設定が単なる資料ではなく、主人公の行動を制限し、同時に物語を広げる力として機能している。 長大な作品ですが、その長さだからこそ描けた社会の変化と人生があります。 「異世界で本を作る話」がここまで大きくなるとは、読み始めた時には全く想像していませんでした。
- 8
獣の見た夢
カクヨム転生者である主人公にスキルや都合のいいチートが与えられ、一直線に成功していく作品ではありません。 戦乱と魔獣のいる世界を歩き、様々な人間に出会い、傷つきながら少しずつ変わっていく。 特に面白いのは、人間が綺麗に整理されていないところです。 善人だから正しいことだけをするわけでもなく、好意と欲望と打算が混ざる。主人公も含めて、それぞれが自分の欲しいものを抱えて生きています。 読んでいて「その選択をするのか」と唸らされることがある。 世界も広く、物語も長く、決して万人向けとは思いませんが、時々ほかの作品ではなかなか味わえないものを見せてくれる作品です。
- 9
辺境の老騎士
小説家になろう老騎士バルドが、長年仕えた家を離れて旅に出る。 ただそれだけの始まりです。 各地を巡り、人と出会い、食べ、戦い、別れていく。一つ一つの出来事は小さくても、バルドがそれまで生きてきた年月や騎士として積み重ねた経験が判断の端々に表れます。 そして何より好きなのが、世界がバルドのために存在していないこと。 彼が来る前からその土地には人々の生活があり、去ったあとにも生活は続いていく。 そうした旅の積み重ねが、いつの間にか一人の老騎士の冒険ではなく、大きな歴史の一部になっている。 派手な仕掛けがなくても、世界と人間をしっかり描けばこれほど面白い物語になる。 何度思い返しても好きな作品です。
- 10
神統記(テオゴニア)
小説家になろうじ作者の『陶都物語』も面白いのですが、私は圧倒的にこちらの方が好きです。 人間が亜人種との生存競争を続ける辺境。主人公は前世の記憶を持っていますが、それによって現代知識無双を始めるわけではありません。 この作品で惹かれたのは、とにかく世界そのものです。 土地、氏族、種族、神々、加護。それぞれが別々の設定ではなく、「この世界ではなぜ人間がこう生きているのか」という一つの構造としてつながっている。 主人公が強くなっていく過程にも、ちゃんとその世界なりの理由があります。 話が広がるほど、最初に見えていた辺境の争いが世界全体の仕組みの一部だったことが分かってくるのも非常に好みです。 アニメ版は残念ながら私にはかなり物足りませんでした。 この作品の魅力は、派手な戦闘以上に、じっくり積み上げられる世界の厚みにあると思っています。
- 11
この残酷な世界への反乱
R18ノクターンノベルズタイトル通り、本当に残酷です。 しかもミッドナイトノベルズ掲載なので、内容的にもかなり人を選びます。気軽に誰にでも勧められる作品ではありません。 ただ、この作品の残酷さは、単に読者へ刺激を与えるためだけに置かれているものではないと思っています。 人間が何をされれば、世界そのものに反旗を翻すところまで行くのか。 それを一つの事件だけで済ませず、これでもかというほど積み重ねていく。 その先に「魔王レイ」と「魔剣カムイ」が生まれるので、過激な展開にも物語上の因果があります。 読んでいてしんどい。 それでも先を読まされる。 同じ『魔剣カムイ』シリーズの『魔王の器』よりこちらを高く評価しているのは、この「世界そのものに反乱する理由」の描き方が、今でも強烈に記憶に残っているからです。
- 12
捨て悪役令嬢は怪物にお伽噺を語る
小説家になろう悪役令嬢、婚約破棄、追放。 並べると、これでもかというくらい見慣れた材料です。 それなのに面白い。 そこがこの作品のすごいところだと思います。 私は悪役令嬢もの自体が嫌いなのではありません。嫌いなのは、主人公を正しいと証明するために元婚約者や周囲の人物が突然馬鹿になり、世界そのものが主人公を褒める装置になるタイプです。 この作品には、それとは違う不穏さがあります。 追放された公爵令嬢シルフと、彼女を取り巻く人々。そして「お伽噺」というものの扱い方。 読み進めていくほど、最初に見えていた悪役令嬢ものの構図自体が違って見えてきます。 短めの作品なのもあり、非常によくまとまっています。 テンプレートというものは、使うこと自体が問題なのではない。料理の仕方次第でこれほど違うものになるのだと感じた作品です。
- 13
火刑戦旗を掲げよ!
小説家になろう非常に戦記物らしい戦記物です。 一人の英雄が火刑に処されたところから始まり、時を経て、その英雄を思わせる少年マルコが戦乱の世へ現れる。 主人公自身の能力やカリスマはかなり強い作品ですが、それだけで終わらず、軍隊、貴族、内政、戦略、周囲の人物たちまで含めて物語が動いていくところが好きです。 戦争を描く作品では主人公の強さだけを追いかけるものも多いですが、私は「誰が何人率いて、どこでどう戦い、それによって政治的に何が変わるのか」という部分が読みたい。 この作品には、そういう戦記を読んでいる楽しさがあります。 Web小説を読み始めた比較的早い時期に読んだ作品の一つですが、昔好きだったものを掘り返してみても、やはり今の好みと大きく変わっていませんでした。 今でも十分に最終選考へ残る作品です。
- 14
リビルドワールド
カクヨム旧文明の遺跡を漁り、その遺物によって生きている世界。 この設定自体も好きなのですが、一番面白いのは、旧世界の技術が単なる「すごいアイテム」ではなく、現在の都市や企業、ハンター社会そのものを成立させているところです。 スラムの少年アキラがアルファと出会い、ハンターとして少しずつ上へ進んでいく。 主人公は強くなりますが、その周囲には企業、都市、組織、他のハンターがいて、彼らは別にアキラを中心に世界を回しているわけではありません。 また、主人公が見ているものと、世界の本当の姿が必ずしも一致しているとは限らない。その不穏さも非常に好みです。 ポストアポカリプス物としての世界観と、一人の少年の成り上がりがうまく噛み合った作品。
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